POSデータは、現場に聞くための理由をくれる

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― インフルエンサーが動かしていた ―
データ活用というと、
「アンケートを取る」「インタビューをする」といった手法が、
今でも当たり前のように語られます。
ただ、現場で経営や業務改善を見ていると、
どうしても違和感が残る場面があります。
人は、答えたとおりには行動していないのではないか。
これは修士論文を書いたときにも感じたことでしたし、
実務に出てからは、より強く感じるようになりました。
人は嘘をつく。でも、それは悪意ではない
アンケートやインタビューで出てくる「嘘」は、
ほとんどの場合、悪意のある嘘ではありません。
- 社会的に正しそうな回答
- それっぽく整えた理由
- 後付けで語られる動機
本人としては「正直に答えているつもり」でも、
それは行動の記録ではなく、解釈された物語です。
しかも、
プロトコル通りに進めれば進めるほど、
話は「きれい」になります。
POSデータは、黙って行動だけを残す
一方、POSデータは何も語りません。
- いつ
- どの商品が
- いくつ
- いくらで売れたか
ただそれだけが、淡々と残る。
だからこそ、
人が何を考えたかではなく、
何を選んだかだけが記録される
この点で、POSデータはとても強い。
事例:理由の分からない売上増
ここで、ある事例を一つ。
ある小売店で、
平日の水曜日に、特定の商品だけが不自然に売れていました。
- 価格変更なし
- 店内施策なし
- 天候要因でも説明できない
統計モデルで分析すると、
明らかに「いつもと違う動き」が出ている。
ただし、原因は分からない。
周辺データを確認しても、答えは出ない
そこで、周辺情報を確認します。
- テレビCM:なし
- チラシ・告知:なし
- 店舗側の施策:なし
経営側が把握している範囲では、
売れる理由が見当たらない。
POSデータは「異変」を教えてくれるが、
「理由」までは教えてくれない。
若いスタッフに聞いてみる
この段階で、現場に聞いてみます。
しかも、管理職ではなく、若いスタッフに。
「この日、○○が妙に売れてるけど、何か心当たりある?」
すると、あっさり返ってくる。
- 「あ、それ、インスタで回ってましたよ」
- 「○○ってインフルエンサーが紹介してたやつです」
経営側は誰も見ていない。
日報にも書かれていない。
でも、お客さんは確実に反応している。
テレビではなく、インフルエンサーが動かしていた
少し前なら、
「テレビで紹介されたのでは?」と考えたかもしれません。
でも、若いスタッフに聞くと分かる。
今は、テレビよりもインフルエンサー
この情報は、
- POSデータだけでは分からない
- 日報にも書かれにくい
- 会議資料にも上がってこない
しかし、行動としては、はっきり表れている。
日報は不要なのか? そうではない
ここで誤解してはいけないのは、
日報が無意味だという話ではない
ということです。
日報は、
- 事実の記録
- 組織としての共有
- 振り返りのためのログ
として、今でも重要です。
ただし、
日報に書かれない会話に、
現場理解の核心があることも多い
この点は、意識しておく必要があります。
データ活用で大事なのは「順番」
経験上、この順番を間違えると話が歪みます。
- POSデータを見る
- モデルで「いつもと違う動き」を見つける
- 天気・日報・ニュースなどを確認する
- 仮説を持って、現場に聞く
この順番だからこそ、
- 建前が入りにくい
- 話が現実につながる
- 行動と説明が一致する
データ分析のゴールは何か
データ分析のゴールは、
きれいなレポートを書くことではありません。
現場に行って、
ちゃんと話を聞ける状態になること
POSデータは、
そのための「聞く理由」を与えてくれる道具なのだと思います。


