Airbnb | 宿泊施設の評価は、静かにインフレ化している

宿泊事業者の方から相談を受けていると、ここ数年で明らかな変化を感じます。
それは、「★5を取るための条件」が、以前とはまったく違うものになってきている、という点です。
少し前までであれば、ホスト対応が良いというだけで、十分に差別化ができました。
返信が早い、説明が丁寧、トラブル時の対応が柔軟である。
こうした姿勢が「感じの良い宿」として評価され、自然と★5が付く時代が確かに存在していました。
しかし、今はもうその段階を過ぎています。
現在の宿泊予約サイトにおいて、★5を維持するために必要なのは「感動」ではありません。
求められているのは、不満を徹底的に潰しきる力です。
Contents
ホスト対応は「評価ポイント」ではなく「前提条件」
今の宿泊サイトでは、レスポンスが早いこと、清掃が行き届いていること、チェックインがスムーズであることは、評価を上げる要素ではありません。
これらはすべて「できていて当然の前提条件」です。
その結果として起きているのが、
特に大きな不満はなかったはずなのに、★4が付く
という現象です。
評価は確実にインフレしています。
★5とは「良かった」という意味ではなく、減点要素が一切見当たらない状態を指す水準にまで引き上げられているのです。
評価を下げているのは「クレーム」ではない
厄介なのは、★を落としている原因の多くが、はっきりしたクレームではない点にあります。
レビューを読むと、よく次のような表現が並びます。
「少し音が気になりました」
「やや分かりにくかったです」
「思ったよりコンパクトでした」
一文ずつ見れば、どれも致命的ではありません。
ただ、これらが積み重なることで、確実に★は削られていきます。
つまり必要なのは、クレーム対応ではありません。
ゲスト自身も強く意識していない「潜在的な不満」を炙り出すことです。
レビューは「感想」ではなく「データ」
レビューを感想として読んでしまうと、どうしても印象や主観に引きずられます。
しかし、宿泊予約サイトの最大の強みは、自由記述レビューが大量に蓄積されている点にあります。
自由記述の中には、ゲストが「なぜ減点したのか」という理由が、ほぼ必ず含まれています。
それを個別に読むのではなく、束ねて分析することで、初めて構造が見えてきます。
実際にテキスト分析をやってみる(仮想事例)
例えば、以下は実在の施設を特定できないよう調整した仮想レビューです。
清潔で快適でしたが、夜は少し音が気になりました。
ホストの対応は丁寧でした。ただ、鍵の場所が分かりにくかったです。
写真の印象より、部屋がややコンパクトに感じました。
設備は揃っていましたが、エアコンの操作に少し迷いました。
どれも深刻な内容ではありません。
それでも、★4が付く理由はすべてこの中に含まれています。
ワードクラウドで「違和感」を可視化する
これらのレビュー全文をまとめてワードクラウドにかけると、「少し」「やや」「気になる」「迷う」といった言葉が目立ってきます。
ワードクラウドとは、文章中に出てくる単語を出現頻度に応じて可視化する手法です。
宿泊レビューでは、強いクレームよりも、こうした弱い不満語が繰り返し出ていないかを見るのに向いています。
【用語解説】ワードクラウドとは
ワードクラウドとは、文章中に出てくる単語を出現頻度に応じて大きさを変えて可視化する手法です。


- よく出てくる言葉ほど大きく表示される
- 一目で「何が繰り返し語られているか」が分かる
宿泊レビューでは、強いクレームよりも弱い不満語が頻出していないかを見るのに向いています。
TF-IDF的な考え方で「その施設特有の不満」を拾う
次に行うのが、
次に行うのが、一般的なレビューにも出てくる言葉と、その施設で特に目立つ言葉を分ける作業です。
ここで有効なのが、TF-IDFという考え方です。
TF-IDFは、「その文章ではよく出るが、他ではあまり出ない言葉」を見つける指標です。
これにより、「どこにでもある不満」ではなく、「その施設特有の減点要因」が浮かび上がります。
今回の仮想事例では、「音」「鍵」「写真との差」「操作方法」といった要素が目立ちました。
【用語解説】TF-IDFとは
TF-IDFとは、
「その文章ではよく出るが、他ではあまり出ない言葉」
を見つけるための指標です。
- TF(出現頻度):その施設のレビュー内でどれくらい出るか
- IDF(希少性):他の施設ではどれくらい出にくいか
これにより、
「どこにでもある不満」
ではなく
「その施設特有の減点要因」
を特定できます。
★を落とす一言を見つける(感度分析)
★を落とす一言は、ほぼ決まっている
さらに、★5レビューと★4レビューを分けて比較すると、決定的な違いが見えてきます。
★5レビューには、「問題ありませんでした」「快適でした」といった表現が多く見られます。
一方、★4レビューには、「〜でしたが」「ただ」「少し」といった逆接が頻出します。
宿泊レビューでは、強い不満があるかどうかよりも、マイナスが一つでも存在するかが評価を分けます。
逆接が出た時点で、★5から落ちやすいという傾向は非常に明確です。。
【用語解説】感度分析とは
ここでいう感度分析とは、
評価(★)の違いに、どの言葉がどれだけ影響しているかを見る分析です。
- 強い不満かどうかではない
- 「マイナスが1つでもあるか」が重要
宿泊レビューでは、逆接(〜だが、ただし)が出た時点で評価が★5から落ちやすいことが分かります。
不満は「構造」で整理できる
分析結果を整理すると、構造はシンプルです。
不満
- 音が気になる
- 分かりにくい
- 思ったより狭い
原因
- 事前説明不足
- 導線が曖昧
- 写真が期待値を上げすぎる
対策
- 音が出る可能性を事前に明示する
- 写真付きチェックインガイド
- サイズ感が分かる写真に差し替える
- 操作方法を1枚にまとめる
多くの不満は、設備そのものではなく、事前説明不足や導線の曖昧さ、期待値のズレから生まれています。
写真を差し替える、チェックインガイドを分かりやすくする、操作方法を1枚にまとめる。
こうした運用改善だけで潰せる不満が、大半を占めます。
それでも残る不満は、設備投資の領域
一方で、防音性能や水回りの古さ、照明、空調といった問題は、運用だけでは解消できません。
この領域は、どうしても設備投資や改装が必要になります。
東京都内の宿泊施設であれば、東京観光財団の補助金制度が選択肢になります。
レビュー由来の不満解消は、補助金の趣旨とも非常に相性が良いテーマとなります。
東京都内なら観光財団の補助金が使える
東京都内の宿泊施設であれば、東京観光財団の補助金制度が選択肢になります。
観光財団の補助金は、
- 宿泊施設の改修
- 快適性・安全性の向上
- インバウンド対応
などを対象としており、
レビュー由来の不満解消と相性が良いのが特徴です。
レビュー分析は補助金申請の根拠になる
補助金申請では、なぜこの投資が必要なのか、どんな課題を解決するのかが必ず問われます。
レビュー分析は、実際の利用者の声をもとに、繰り返し出てくる不満と、その放置リスクを示す客観的な根拠になります。
Airbnb以外でも構造は同じ
この話は、Airbnbだけのものではありません。
楽天トラベルやGoogleマップなど、どのレビュー媒体でも、同じ構造が見られます。
まとめ
- 宿泊施設の評価はインフレしています。
- ★5とは、感動ではなく「減点が一切ない状態」です。
- ホスト対応や清潔さは、すでに差別化要因ではありません。
- 評価を下げているのは、強いクレームではなく、「少し」「やや」「気になる」といった弱い不満です。
- レビューは感想ではなくデータとして読む。
- 構造を見抜き、潰せる不満から順に消していく。
- それが、今の時代に★5を維持するための、現実的な戦い方です。


