経営目標、最初に決める目標は「売上」ではない

── 受注型(下請け型)の中小企業が本当に見るべき数字

売上を伸ばしても、なぜか楽にならない理由

中小企業の経営相談で、出てくるお話が「とりあえず来期の売上目標を立てたい」「売上を伸ばさないと不安で……」という売上起点の事業計画です。その感覚自体は、ごく自然なものだと思います。

ただし、受注型(下請け型)で、入金サイトが長く、仕入や外注、人件費を先に支払う構造の企業に限って言えば、売上目標を起点に経営を考えることが、かえって会社を苦しくするケースは少なくありません。売上が立っても、入金は数か月後。その一方で、仕入や外注費、人件費は先に出ていきます。結果として、売上が増えるほど運転資金の先出しが増え、手元資金はむしろ減っていく。ここに、この手の企業特有の落とし穴があります。

この状態で売上目標を先に置くと、人を増やし、設備を入れ、固定費だけが先行します。すると何が起きるかというと、「黒字なのに資金繰りが苦しい」という、一番しんどい状態に陥るのです。数字上は成功しているように見えるのに、現場の感覚はずっと苦しい。多くの経営者が感じている違和感の正体は、だいたいここにあります。

この規模の会社に必要なのは「成長計画」ではない

ここで言っている「この規模の会社」とは、受注型(下請け型)で、入金サイトが長く、仕入や外注、人件費を先に支払う構造を持つ中小企業のことです。売上規模の大小というよりも、資金の流れが常に先出しになりやすい、という構造面に特徴があります。

こうした企業にとって、最優先課題は成長ではなく、生存です。にもかかわらず、事業計画というと、「3年後に売上〇億円」「市場規模はこれくらい」「こうやって事業を拡大する」といった話から入ってしまいがちです。もちろん、それ自体が間違っているわけではありません。

ただ、この構造の会社の場合、売上が伸びるほど運転資金の負担も同時に膨らみます。にもかかわらず、売上目標だけを先に置いてしまうと、「数字上は成長しているのに、手元は苦しくなる」という矛盾を抱え込むことになります。

だからこそ、この段階で本当に必要なのは、将来像を語る成長計画ではなく、なぜ資金繰りが詰まらずに回り続けるのかを説明できる計画です。

「利益を先に決める」とは、儲けを狙うことではない

ここ数年で、もう一つ決定的に変わった点があります。それが、インフレです。仕入単価や外注費は先に上がり、人件費は時間差で必ず上がる。ガソリン代や電気代は読みにくく、金利もじわじわ効いてきます。つまり、今と同じ状態を維持しているつもりでも、実質的には後退していく環境にあります。

だからこそ、「利益を先に決める」という発想が必要になります。これは、「利益率〇%を目標にする」という話ではありません。インフレの影響を受けやすく、努力では止められないコスト、仕入、外注、人件費、エネルギーコスト、金利負担、こうしたものが今後どれくらい増えるかを先に見積もる、という意味です。

その増加分の合計が、最低限確保しなければならない利益になります。利益は「儲け」や「ご褒美」ではありません。インフレを吸収するためのクッション、防波堤です。これがないと、値上げは遅れ、賃上げはできず、設備更新は先送りされ、人が辞めていく。数字上は生きていても、確実に体力が削られていく会社になります。

売上目標は、最後に逆算される

ここまで整理して、初めて売上が登場します。必要売上は、「固定費+将来増えるコスト+必要な利益」を、限界利益率で割って逆算します。この売上は、気合で達成する目標ではありません。生き残るための最低売上です。

もし、この水準が現実的に達成できないのであれば、やるべきことは精神論ではなく、価格転嫁、取引条件の見直し、事業構造そのものの変更です。成長を否定しているわけではありません。ただ、資金繰りが詰まる成長は、成長ではなく破綻への加速です。

まずは、確実に回る体制を作る。その上で余力が生まれたときに、初めて「攻め」が意味を持ちます。順番を間違えると、伸びようとして折れます。

最後に、この記事を読んだら、明日やってほしいことがあります。直近3か月の資金繰り表を見て、「毎月、確実に出ていく金額」を一覧にしてみてください。それが、すべての起点になります。