中小企業診断士とは?理論と実務をつなぐ経営支援の国家資格

中小企業診断士という仕事

――理論を武器に、現場の「熱」を形にする伴走者

経営の現場には、いつも正解のない問いがあります。

売上は伸ばしたいが、現場はすでに手一杯。
新しいことに挑戦したいが、失敗する余力はない。
理屈では分かっているのに、決断できない。

こうした場面で、経営理論だけを並べても会社は動きません。
一方で、経験や勘だけに頼った経営も、変化の速い時代では不安定です。

中小企業診断士は、その 理論と実務のあいだ に立つ専門家です。
理想論を語る立場でもなく、現状を肯定するだけの存在でもありません。
経営者が感じている言葉にならない違和感や迷いを受け止め、それを 「考えられる形」「動ける形」 に整えていく。
それが、私たち中小企業診断士の仕事です。


「答え」を出す人ではなく、「考え方」を整える人

中小企業診断士は、中小企業支援法に基づき、経済産業大臣が登録する日本で唯一の 経営コンサルタントの国家資格 です。

ただ、この肩書きから想像されるほど、仕事は立派でも万能でもありません。
むしろ、かなり地味です。

私たちは、完成された答えを持って経営者の前に現れるわけではありません。

  • どこに引っかかっているのか
  • 何が決めきれないのか
  • 本当は何を優先したいのか

そうした思考のもつれを一つずつほどきながら、「次に考えるべきこと」を一緒に整理していきます。

中小企業診断士の役割は、経営者の代わりに決めることではなく、経営者が考え続けられる状態をつくることだと考えています。


現場を動かす「診る・話す・書く」

診断士の仕事を細かく分解すると、「診る・話す・書く」という三つの動きに行き着きます。

診る ―― 違和感を、構造として捉え直す

「なぜか資金繰りが苦しい」
「忙しい割に、手応えがない」
「社員の雰囲気が変わった気がする」

こうした経営者の感覚は、たいてい的外れではありません。
ただ、そのままでは判断材料として使いにくい。

診断士は、その違和感を財務、業務プロセス、組織、市場環境といった視点から整理し、構造として見える形 にしていきます。

勘を否定するのではなく、勘を 考えられる材料 に変える。
そこが出発点です。


話す ―― 理論を、現場の言葉に置き換える

どれだけ丁寧に分析しても、伝わらなければ意味がありません。

診断士の「話す」は、説明というより 翻訳 に近い作業です。

専門用語を並べるのではなく、理論をそのまま当てはめるのでもなく、「それなら自分たちにもできそうだ」と感じてもらえる言葉に置き換える。

人が動くのは、理屈を理解したときではなく、自分ごととして腹落ちしたとき だからです。


書く ―― 曖昧な考えを、「経営の地図」にする

頭の中で考えているだけでは、経営は整理されません。
文章にして初めて、論点のズレや抜けが見えてきます。

事業計画書や報告書は、単なる提出物ではありません。

  • 判断の軸を共有し
  • 話が元に戻るのを防ぎ
  • 迷ったときに立ち返る場所をつくる

いわば 経営の地図 のようなものです。


理論は、経営を考え続けるための「思考の軸」

「現場がすべてで、理論は役に立たない」
そう言われることもあります。

ですが、中小企業診断士は、あえて理論を重視します。
理論とは、経営を感情や場当たり的な判断から守る 思考の軸 だからです。

経営は、選択の連続です。
短期を取るか、将来を取るか。
守るか、攻めるか。

そのたびに判断がブレるのは、軸がないからではなく、軸を意識せずに使っているから です。

理論は、正解を教えてくれるものではありません。
「どう考えるか」を考え続けるための道具です。

もちろん、理論をそのまま現場に当てはめても機能しません。

この会社、この業種、この人たち、このタイミングで、どこまで使えるのか。どこは捨てるのか。

そこを考え抜いて、理論を 現場で使える思考の道具 に変換する。
それが、中小企業診断士の専門性です。


「何が問題かわからない」ときにこそ

中小企業診断士には、経営改善、業務改善、DX、補助金、創業支援など、さまざまな相談が寄せられます。

ただ、実際に多いのは
「何から手を付ければいいかわからない」
「相談内容をうまく言葉にできない」
という状態です。

その段階で構いません。
むしろ、その状態こそ診断士が関わる意味があります。

派手な成功談を語ることよりも、目の前の経営者の思考を整理し、重荷を少し軽くすること。
理論と実務のあいだで立ち止まり、考え、つなぎ直すこと。

その積み重ねが、中小企業の経営を現実的に前へ進める力になる。
私は、そう考えています。

中小企業診断士は、理論と実務をつなぐ経営支援の国家資格です。

単なる経営アドバイザーでも、評論家でもありません。
経営理論を理解した上で、それを中小企業の現場で機能させることを使命とする専門家です。

中小企業診断士とは

中小企業診断士とは、

  • 理論に基づいて企業を診る専門家であり
  • 理論を現場に伝える専門家であり
  • 理論と実務を文章でつなぐ専門家です

理論と実務の橋渡し役として、
中小企業の経営を現実的に前へ進める存在です。


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